ニーダーフィノウのシフスヘーベヴェルクは、とにかく圧倒的だった。まずそれは予想していたのよりひとまわり以上大きかった。とてつもない量の鉄骨が小山のように積み上げられていて、スマートなコンクリート製のシャルネベックや、鉄板細工のローテンゼーとは全く違うタイプの存在感があった。たとえば東京タワーのように、上へ上へと組み上げられる鉄骨ならわれわれは結構、見慣れているものだ。しかしここでは鉄骨は縦横ななめと複雑に入り組んで、全体としては横長の楼閣のような姿に集結している。それは文字通り鉄の意志のようなものがむき出しで、とても勇ましく、軍事施設のような雰囲気すらただよわせている。建てられた時代の空気のせいもあるのかもしれない。なにしろ完成は1934年のことなのだ。そしてそれ以降、第二次大戦の敗戦も、東ドイツの崩壊も越えて、何もかもが氷づけになって船が通れなくなる厳冬期を除く毎日、律義に36メートル上がったり下がったりしてきたのだ。

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