2002.04.24

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photo and text : Sato Jun Ichi
●気分を変えたいときは船に乗ることにしている。それがたとえ所要時間5分の渡船であっても、水を渡る行為によって確かに気分が変わったような気がするものである●利根川を渡してくれる残り少ない渡船のひとつ、赤岩渡船は、主要地方道(県道)熊谷・館林線が利根川を渡るポイントに存在する。県道といっても橋がないので、妙な話だがこの船は県道の一部とみなされるらしい。だから料金は不要である●まあそういう話は実はどうでもよくて、この程度のつつましやかな越境(この場合は県境越え)のお膳立てであっても、間に水が入ることによってそれは結構大きな心理的な揺らぎとなってしまうのがどうにも面白くてならない。臨死体験で必ず報告される渡河のシチュエーションは、脳というシステムのシャットダウン・シーケンスとして組み込まれているという説がある。遺伝子レベルなのか文化レベルなのか知らないが、いずれにせよわれわれにとって水を渡るという行為は、かなり深い層に置かれた行動の原型のひとつなのだろう●群馬県側の赤岩から渡してもらって、埼玉県側の葛和田に上陸。5年ぶりに対面する巨大な福川水門は、ここから堤防上を歩いて20分ほどのところにある。